古典を新たな糧とするために・・・
この企画は終了しました
盛会御礼!
4月1日(金)18:00~19:00
さらに 19:30~21:00
<花見の会 online >
事前登録は不要です。学友のみなさまは、
時間になりましたらいつものZOOMにつないでください。
この機会に学舎を覗いてみたいという方の参加も歓迎いたします。「お問い合わせ」よりご一報ください。学内ページにご案内いたします。
三嶋 輝夫 / 堀尾 耕一
新学期よりプラトン『クリトン』講読をご担当いただく 三嶋輝夫 氏の近著『ソクラテスと若者たち』をめぐって、著者にいろいろとお話を伺います。とりわけ、ソクラテスに対するある種の「疑問」ないしは「不満」をストレートにぶつける若者たちに焦点を当てた議論は、哲学の始まりとしての「対話」そのものへの導入となることでしょう。
参加者の積極的なご質問、ご発言を歓迎いたします。
大久保 俊輔
当学舎の若い学友である 大久保俊輔 さんはこの3月に青山学院大学を卒業の予定、4月からは IT 企業に就職なさいます。
去る2020年2月8日(土)に行われた研究セミナーは、おかげさまで盛況のうちに終わりました。発表は大学の卒業論文をもとに行われましたが、当日のやりとりをふまえたその改訂版を、本欄に掲載いたします。
<発表要旨>
古代ギリシアの英雄叙事詩『イリアス』は口誦詩の伝統のもと、前8世紀頃に成立した作品である。口誦詩とは詩人が聴衆を前にして即興で歌うスタイルの詩であり、その内容は聴衆の好みによると考えられる。とすれば『イリアス』は成立した当時の社会の価値観を代表していると言えるのではなかろうか。そこで『イリアス』の内容を検討し、当時のギリシア社会の様相にまで迫っていきたい。
『イリアス』は戦場での英雄たちの誉れを歌い上げる。第一線で勇敢に戦う英雄たちの姿は、聴衆にとって一定の美徳を備えた優れた人々と映ったであろう。一方で主人公であるアキレウスはというと、こうした英雄たちと同じように捉えることができない。誉れの場であるはずの戦場からは離れ、仲間であるはずのギリシア人たちとの関係を拒否しているようにも見える。こうしてアキレウスは他の英雄たちと明らかに異質な存在と映るのである。
このアキレウスという英雄をどう捉えるかという問いは、彼が『イリアス』の主人公である以上、作品全体の理解に本質的な意味を持つものである。本邦においては川島重成の解釈が大きな影響力を持っているように思われる。川島によると、アキレウスは既存の価値観から脱却した「新しい英雄」であり、ヒューマニズム的な人間真理に目覚めた英雄と理解される。一方で安西眞はアキレウスをむしろ古いタイプの英雄として解釈する。そして「アキレウスの怒り」も古い英雄原理を体現するアキレウスと、アガメムノンを頂点とした新しい社会との価値観のギャップに基づいていると理解すべきであるという。
どちらの解釈にせよアキレウスを彼の属する社会との価値観の相違に苦悩する英雄と捉えている点に変わりはないようにも思われるが、筆者はアキレウスを古い英雄と捉える方が妥当であると考える。アキレウスを社会の変化に取り残された英雄と理解するとき、当時の社会変化がより重大であったことがわかる。
研究発表のすすめ
研究所としての学舎の中心的な活動領域です。テーマは参加者の自主的な判断を基本としますが、同時にこのセミナーは、可能なかぎり、出版活動を視野に収めたものにしたいと目論んでいます。つまり、ここで討論に付される話題は、発表者にとって、注釈書の一部にしたいこと、注釈書や研究書籍を執筆する過程でどうしても他者の意見を聞いておきたいことであるのが望ましい、ということです。むろん、「本にする」というアウトプットが先行して、研究そのものを不必要に縛るようなことがあっては本末転倒です。目指すべきは、互いに適度なプレッシャーを与えあう場であるといえましょう。
今のところ、ギリシア語文献研究、ラテン語文献研究、古典学方法論、という、大きく3つの分野を考えています。その研究会の日時や内容の予告、およびその成果については、順次このページで公開していく予定です。発表を希望される方は、「お問合わせ」フォームをとおして、発表概要および時期を明記のうえ、どしどしご応募ください。
安西 眞